手洗いの重要さと葬儀でお清め塩を使う意味
感染制御の父と言われたイグナッツ・フィリップ・ゼンメルワイス(Ignaz Philipp Semmelweis、1818.7.1生〜1865.8.13没)はハンガリー出身の医師で、「産褥熱は接触感染の病気であり、医療従事者に手の消毒を義務づけることでその発症率を激減させることができる」ことを証明して見せました。インフルエンザや新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ最も効果的な方法のひとつは、手を洗うことです。米疾病対策センター(CDC)は、せっけんを使って20秒間手を洗い、流水ですすぐようにつよく推奨しています。
手を洗うという文化として日本のお葬式では古くから手を清めるためにお清め塩というものがあり、現在でも各地で広く使用されています。お清め塩の由来として昔の日本では、天災や病気などの良くないことが起こった時、塩で身を清めて厄を逃れるという風習がありました。特に、神道では「死」を穢れたものとして捉えられていたため、葬儀後は穢れを取る目的で海に入ってみそぎを行ったり、体に塩を振ったりして身を清めたと言われています。古来の日本では神道信者の方が多かったため、その名残が「お清めの塩」として残っています。さらに、昔は現代に比べて衛生的な環境が整っていないという背景も加わり、腐敗を遅らせたりする効果がある塩を振る行為には、大変重要な意味があったようです。
医学会から批判され続けながらも公衆衛生の重要性を発見し、自らの死後も多くの命を救うことになった「イグナッツ・ゼンメルワイス」と、日本古事記にて殺菌・消毒効果があることが証明されている「お清め塩の文化と歴史」。
この二つの諸説から共通して言えることは、命を守るための行動ということだけではなく、正しい情報を判断した上でまず自分を律することが、肉体的にも精神的にも大切な人を守ることにつながるのだということです。
先人の教えを時代や環境に合わせて柔軟に変化させていくことは大切ですが、今一人ひとりができることを確実に、粛々と、徹底して継続していくことが、私達の最も重要な課題なのですね。